ディスクブレーキ自転車を買うなら知っておく必要がある「音鳴り」の問題

2019/04/06

ためになる話 自転車の知識

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この問題は自転車屋さんが事前に教えてくれません。

ディスクブレーキはブレーキパッドとローター間で「音鳴り」が発生することがあります。ブレーキをかけたときに『キィ!!』という高音が響き渡るのです。

必ず発生するわけではありませんし、統計を取れば発生しない確率の方がずっと高いでしょう。とは言え、自転車の素材やブレーキの規格によっては発生しやすくなるのもまた事実…。

ディスクブレーキバイクを購入する予定がある方は必ず知っておくべき内容です。ちょっと長いですが全部読んでください。

後悔してからでは…遅い!


ポストマウントとフラットマウント

ディスクブレーキには3種類の規格がありますが、かなりの方が2つまでしか知らなかったりするのではないかと思います。一つは実質的に消えていますからね…。

規格として現状残っているのは以下の2つです。

・ポストマウント
・フラットマウント

ポストマウントはこんなやつで…

何か出っ張りがある

フラットマウントはこんなのです。

べったりくっ付いている

ちなみに消えた規格はインターナショナルスタンダード(ISと略されます)というものです。

こんなに大げさな名前を付けておいて消えるというのは何とも皮肉な話ですが、昔のディスクブレーキは規格なんてあったものではなかったのでインターナショナルスタンダードが出た当時は『神キタ━(゚∀゚)━!!』みたいな感じでもありました。

ディスクブレーキは「IS→ポストマウント→フラットマウント」という流れで登場してきています。

まぁ要するに『ポストマウントよりもフラットマウントの方が良い』わけです。

何もかもフラットマウントが優れているわけではないですが(※ポストの方が頑丈なのでMTBはこっちです)、「ディスクブレーキロードバイク」ということになるとフラットマウントの方が適しています。

フラットマウントの方がローター径を自然に小さく出来るので制動力を落とすことが出来るんですね。

ディスクブレーキの制動力は本当に強いのでロードバイクのような「減速」が必要な自転車だとフラットマウントの方が都合が良いわけです。

こうなると当然ながらロードバイクユーザーとしてはフラットマウントが欲しくなるわけですが、残念ながらクロモリフレームの場合はフラットマウントというものが不可能だったりします。


これは構造的にどうしようもありません。

フラットマウントは名前の通りフレームやフォークに「ベタ付け」するものですが、クロモリはチューブが細いのでそんなことをすれば反対側にナットが突き抜けます。リアステーであれば溶接することも可能ですがフロントフォークだけはちょっと…。

まぁそんなわけでクロモリロードバイクフロントフォークのディスクブレーキ規格は必然的に「ポストマウント」になるわけです。

中にはアダプタをかませることを前提としてフラットマウント化されているものもありますが、アダプタをかませてしまうと構造的にはポストマウントと変わりませんからね。

音鳴りが発生するクロモリディスク

では本題に入りましょう。

ポストマウントはフラットマウントのようにべったりくっ付くわけではないのでフォークやフレームとの間に必ず「隙間」が発生します。


ポストマウント式のフロントフォークはこんな感じ、素材はアルミです。こちらは機械式ですが油圧と基本的には変わりません。

…で、これがクロモリフォークになるとこんな感じになったりします。


隙間広過ぎぃ!

出っ張りに関してはもう構造体のレベルですね。ステーというかブリッジというかフランジというか…これを「出っ張り」というのは無理があります。

この隙間がクロモリフォークディスクブレーキの音鳴りの原因です。

このようにフォークとブレーキローターとのクリアランスが広いほどフォークが振動することになります。この振動がブレーキパッドに揺れながら当たることで音鳴りを発生させることになるわけですね。

アルミやカーボンであれば剛性が高いのでこういったことはほとんど起こりませんが、クロモリはとにかく柔くできています。

それがクロモリの「味」であり魅力でもあるわけですが、ことディスクブレーキになればそれが仇となります。ブレーキのたびに『キィ!!キィ!!』とやかましい音を立てる最悪な自転車に成り下がる可能性があるということです。

ひどい場合はその辺にある放置ママチャリの方がマシなくらいに鳴ります、ヒャッハー!汚物はsh(略)

音鳴りが発生しないディスクブレーキバイクの条件

…と、ここまで不安を煽りましたがクロモリディスクブレーキ自転車の全てに音鳴りが発生するわけではありません。

そもそもメーカーが事前に確認しますからね。明らかに問題があるような自転車は売りません。

今回音鳴りが発生したジェイミスのセクエルはフロントフォークオフセットが53mmというとても長いバイクであったせいで発生した可能性が濃厚です。個体差もあるでしょうし、自転車はアナログですからね。

<関連記事>
ジェイミスの新型自転車「セクエル」が納車されたぞ!

オフセットが長ければ長いほどフォークの角度が鋭角になります。鋭角になるほど「隙間」は広がるのでより振動しやすくなるということです。ブレーキが制動力の強い油圧であったことも無視できない要素でしょう。

このように様々な条件が重なった結果として鳴ってしまったと考えるのが妥当です。

これらについては逆に考えれば「音鳴りしにくいディスクブレーキバイク」を選ぶ場合の良い参考にすることができます。

つまり…

・ポストマウントよりフラットマウントの方が音鳴りしにくい
・クロモリフォークよりもカーボンやアルミの方が音鳴りしにくい
・フォークはオフセットが短い方が音鳴りしにくい
・油圧よりも機械の方が音鳴りしにくい

…といったことが言えるわけです。

油圧と機械の関係についてはそこまで強くは言えませんが(機械は機械で片効きしやすいので音鳴りが出る)、上の3つに関しては断言してよいでしょう。


ちなみにリアブレーキに関してはよほどのことが無い限り音鳴りは発生しないはずです。

何故かと言えば、クロモリであってもリア周辺はあらかじめがっしりと補強されているからです。補強しておかないとステーが折れますからね、それくらいディスクブレーキのパワーは強力です。

そのようなわけでこれから新しくディスクバイクを買うということであればリアの音鳴りは心配しなくて良いはずです。

音鳴りを解決するための方法

実際にどうやって音鳴り解決するかということですが、これはもうトライ&エラーしかありません。

音鳴りは相性です、様々な組み合わせを試してみて確認するしかありません。片効きしているようであればまずそこを修正するべきですが、片効きを修正した程度ではどうにもならない場合も少なくありません。

ディスクブレーキはやることが多すぎるというものまた困りもので。まぁそれだけ可能性があるということでもありますけどね…。

ざっと思いつくだけでも以下の「やれること」があります。

・ブレーキパッドを変える
・ブレーキローターを変える
・ブレーキ本体を変える

ブレーキパッドにしてもメーカーが山ほどあり、メタルパッドやレジンパッドという種類で分類されていたりもします。パッドの縁を削って丸くすると改善する場合があります。

ブレーキローターも同様です。たくさんのメーカーがありますしこれは精度の問題も発生します。

安いローターだと家庭でクッキーを作る感じで金属板を「バチンッ」切り取って作っているので表面にエッジが出来ているんですね。こういった小さな凹凸も音鳴りの原因になります。

ブレーキ本体を変えるものキャリパーのように簡単には行きません。使っているホースによって互換性も発生します。


…想像するだけで疲れてきますねこれは。

手軽さから考えれはパッドを変えてみるのが一番楽です。ここで音鳴りが止まれば儲けものと言えます。パッドがダメであればローターも組み合わせて複数のパターンを作るしかありません。ブレーキ交換は最後の手段ですね。

『それでもどうしてもダメだった』ということになるとフロントフォークを変えるしかありませんが、上の3つを完全に試すとそれだけで10万円を超える出費になると思いますので『そこまでやる価値ある?』みたいな話にもなります。

もっと書けばホイールの剛性でも発生したりしなかったりです。

ブレーキローター側のスポークテンションを下げたり、スポーク交差部分にゴムを挟んだりすればピタッと発生しなくなることもシバシバあります。とはいえこんなことをやりだすとまともなホイールにはなりませんけれども。

クロモリディスクブレーキはフォークを妥協

クロモリ愛が強いとどうしても『いやいやフォークもクロモリじゃないと』となるのが普通です。個人的にもそうですので気持ちはとても分かります。

ただまぁここまで書いた通りフォークがクロモリだとこんな問題が発生したりもするわけです。音鳴りが発生しないとしてもクロモリはやはり柔いですからね、ちょっと無茶をするとローターとパッドがスレる音はどうしても聞こえます。

そしてディスクブレーキは調整がめんどくさい。

機械式にするとパッドのセンタリング調整がボルト一本で出来るのでその部分については楽ですが、機械式は高頻度での調整が必要になるのでそれはそれで面倒というもので。

もしかしたら買ったあとで「普通に使えるようにする」だけでも+数万円の費用がかかるかもしれないのがクロモリディスクブレーキの世界なのです。


…というわけで、クロモリディスクブレーキを買う場合はフルクロモリは避けた方が無難です。

クロモリディスクブレーキと言えば大部分がグラベル関係になるわけですが、これらはエントリーであってもフォークだけはアルミ製だったりすることがチラホラです。

ミディアムグレード以上になればほぼ間違いなくカーボンフォークになります。やっぱりこの辺はメーカーさんが分かってる証拠だと思いますよ。

フルクロモリでディスクロードを作っているのは北米系の小さなブランドとか国内のクロモリビルダーといった「クロモリでないといけない理由」があるところくらいです。

実際のところグラベルのような太いタイヤを使うとフロントフォークがクロモリである意味もほとんどありません。タイヤと空気圧でどうとでも出来てしまいますからね。

もし音鳴りが発生して追加で数万円も発生するような状態になると考えると、最初からプラス数万円を投資してミディアムグレード以上のバイクを選んだ方が安心感があるところではないでしょうか。


最近高頻度で更新できているので目がきつい…。

『そもそもディスクブレーキがよく分からない』という場合は以下の記事を参照されて下さい。

<関連記事>
ゼロから理解する自転車のディスクブレーキ

これを読むとディスクロードを買う気が無くなるかもしれませんけどね。

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