ロードバイクをフロントシングル化する場合の選択肢や知っておいたほうが良い事について

2018/10/22

自転車の知識

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しばらく前にキャンプツーリング用のクロモリロードバイクを半ば強引にフロントシングル化したのですが、これについての感想…というか反省を踏まえて改めて『ロードバイクのフロントシングル化をする場合にはどうしたらいいのか』を書いてみたいと思います。

まず前回書いたものを見て貰えると分かりやすいのですが…

<関連記事>
自転車旅におけるロードバイクフロントシングル化のススメ

地味に長ったらしいので簡単にまとめますと『コンパクトクランクのアウターリングを取っ払ってシングル化している』というものです。


思いつく限り最もお手軽なフロントシングル化と言えましょう。BBを変えるどころかクランクさえ変える必要がありません。原則的にはどんな場合でも可能なカスタムです。

…で、この状態でしばらく使ってみたのですがコレはダメでした。

明らかにギア比が小さすぎましたね。キャンプツーリングは10kg近い荷物を追加することになりますが、それを加味してもコンパクトクランク(32T)を利用したフロントシングルはあまり良くないです。

10kgも荷物があるとギア比を小さくしたところで無理な斜度では無理なので、とにかく小さくすればいいということにはならなかったのです(個人的な感想ですが)。それよりも平地での踏み足りない感のストレスの方が大きいと言えましょう。

そのようなわけで、上の反省を踏まえて「まとも」なフロントシングル化について書いてみます。


クランクの歯数は40T前後が目安

これさえ外さなければ後はどうでもよい様な気もしますが、クランクの歯数は40T前後くらいを目安にしないとロードバイクとして上手くいかない可能性が高いのではないかと思います。

軽い場合で38T、重い場合で42Tくらいでしょう。

 

個人的には38Tで落ち着きました。『36Tもあれば十分じゃね?』と思っていましたが甘かったです。貧脚であっても38Tあった方が良いです。FTP150Wの僕が言うのですから間違いありません。

ロードバイクをフロントシングル化する場合の選択肢

「軽い場合で38T」ということになるとコンパクトクランクの流用どころかノーマルクランクの流用も難しいということになります。ノーマルクランクであってもインナーは36Tくらいですからね。

もしノーマルクランクを使用していて『36Tでもいいよ』という場合であればここから先を見る必要はありませんが、ノーマルクランクを利用する人がフロントシングル化を計画する可能性は極めて低いはずのですのでそれらは例外と考えてよいはずです。

ということになると、多くの場合でロードバイクを「まとも」にフロントシングル化する場合は新たに何かしらを買わなければいけません。

その場合の選択肢は大きく分ければ以下の2つになります。

・チェーンリングを交換する
・クランクそのものを交換する

言わずもがなですがお手軽なのは上です。

チェーンリングについて

今現在一般的なレース系ロードバイクで使用されている4アームのシマノクランクのPCD(※BCDとも言います)は110mmです。そのようなわけで、PCDが110mmで希望する歯数のチェーンリングを買って交換すればOKとなります。

<参考>
https://amzn.to/2CwJ3YX

ちなみにPCDというのはチェーンリングを固定しているボルト間の距離のことです。一昔前のシマノクランクだとPCD130mmとかになります。

さて、現在シマノクランクを使用しており『チェーンリングを変えれば満足です』と言う場合はそれで良いわけですが、これだと微妙に問題が発生します。

それは「見た目」と「チェーンリングのタイプ」の問題です。…まぁ実際の使用においては問題というほどでもないのですけれど、物事にこだわる場合は無視の出来ない要素です。

見た目に関しては言わずもがなでしょう。一般的なロードバイク用のシマノクランクは『アウターを取り払う』といった想定がされていないので、インナーのみにすると非常に見た目が悪くなります。

そして重要なのがチェーンリングのタイプです。

レース系のロードバイクオンリーの方からすれば『タイプ?』といった感じかもしれませんが、チェーンリングには「ナローワイド」という種類のものがあるのです。現在のMTBではコレが主流ですね。

ナローワイドとは、チェーンリングの歯の太さが交互に違って構成されているものを言います。


自転車のチェーン(に限ったことでもないのですが)は大きさの違う2つのコマがセットになって構成されているため、チェーンを引っ掛ける穴のサイズが不揃いになります。

『それだとチェーンががっしりと噛み合ってくれないじゃん!』ということからスラムが提案したのがこのナローワイドというシステムです。写真のようにチェーンリングの歯の太さを変えてしまうことで隙間を埋めるわけですね。

こうすることで「チェーン落ち」や「ゴミ詰まり」といったトラブルを抑制するわけです。フロントシングルの場合はまさにうってつけのシステムだと言えましょう。


そんなわけでフロントシングルが基本となっているMTBではほぼ確実にナローワイドのチェーンリングが使われています。

このナローワイドはスラムがパテントを持っているためシマノクランクではあまり採用されません。こっそりオプションパーツとして展開されていたり…。

<参考>
https://bike.shimano.com/ja-JP/product/component/xtr-m9000/FC-M9020-B1.html

というわけでMTB界では「スラム>シマノ」という図式です。変速が如何にスムーズでもチェーンが落ちたら話になりませんからね。自転車パーツはパテントとの戦争でもあります。

ではフロントシングルの話に戻りましょうか。もう書く必要もないかもしれませんが『シマノクランクでフロントシングルはちょっと微妙かもね』ということです。

…とはいえ、ナローワイドが真価を発揮するのは「オフロード」であるのでその辺の舗装路を走る分には別に普通のチェーンリングでこれといった問題が無いことも事実だったりします。滅多にチェーン落ちはありません、不安であればチェーンをちょっと短くしておけば対応出来ます。

ただまぁ「見た目も悪い」「効率も(ちょっと)悪い」ということになると『クランク変えようかな』と思う場合も多いでしょう。そのような場合はフロントシングルクランクについて知っておかなければいけません。

クランクについてのアレコレ

というわけでクランクの話です。

結論から書いてしまうと、クランクの選択としては以下の4つのパターンがあるのではないかと思います。

① 一般のロードバイク用フロントシングルクランクを使う
② スラムのロードバイク用のフロントシングルクランクを使う
③ ミニベロ用のクランクを使う
④ MTB用のクランクを使う

そこそこ面倒ですがそれぞれについて見ていきましょう。そんなに長い話にはなりません…多分。

① 一般のロードバイク用フロントシングルクランク

『そんなものあるの?』と言われそうな気もしますが…ございます。

<参考>
VERO PRO 1X CRANKSET

皆大好きFSAのクランクセットです。厳密に言えばロードバイク用ではないのかもしれませんがその辺りは些細な問題です。

こちらはごく普通のスクエアテーパークランクですのでフレームがシマノねじ切りBBになっていればインストールできます(BBは変える必要がありますが)。

個人的に使っているKONA TONKは今の時代にスクエアテーパーBBなのでそのまま使えます、ありがたや。ついでに書けばチェーンリングの歯もさり気にワイドナローです。

シマノの純正クランクということになると下のようなものもあります。

<参考>
https://amzn.to/2NW1Y1d

こちらは対応BBがホローテック2なのでスクエアテーパーなんて関係ありません。ホローテック2が付いているクランクであればそのまま交換出来ます。見た目がやけにスタイリッシュなのでバイクを選ぶような気もしますがそれも些細な問題ではあります。

11S用と書いてありますがフロントシングルであれば別に関係ありません。シマノからすれば非推奨なのでしょうがクランクが11S用であっても使えることは使えます。

② スラムのロードバイク用のフロントシングルクランクを使う

フロントシングルを立ち上げたスラムはロードバイク用として本気のコンポーネントを作っています。そのようなわけで本来であればこちらを使うのが王道なのかもしれません。

<参考>
スラム Apex1 ロード 1×11コンポーネント登場!

上はもっとも安いグレードのワンバイコンポーネント(フロントシングル用コンポーネント)ですがかなりの値段も求めてきます。バリエーションによって差はありますがドロップハンドル仕様であれば最低6万円。関税を含めてもアリエクで105を買った方が安いです。

ちなみに代理店のリンクは下です。

<参考>
SRAM APEX1 CRANK SET

まぁクランクだけで良いので(変速性能を考えれば寧ろクランクだけの方が良い)、とりあえずクランクということになると下のお値段です。


うーん…ちょい高い、妥協出来ない値段でもないですが。BB30用になると更に高額になります。

スラムは代理店パワーが強いので海外通販で直接買うのが難しかったりします。低グレードであっても送料等を含めると国内で買うのとあまり変わなかったり、堅実なのか面白みがないのか…。

ちなみに実販ということになるとサイクルベースあさひで注文出来たりします。

まぁそれはそれとしてスラムのGXPクランクはシマノのホローテック2BBには対応していないので、もしクランクを使いたい場合はBBも交換しなければいけません。

<参考>
https://amzn.to/2ScRDl8

BBも高い、何だか面倒になってきますね。

③ ミニベロ(小径車)用のクランクを使う

厳密に言えばミニベロ用のクランクというわけではないのですがこの辺はスルーして下さい。

ミニベロに使われているクランクは原則的に歯数が大きくなっています。ミニベロはホイールサイズが小さいのでロードバイク等よりギア比を大きくしてあげないと走行性能が上がらないのです。

というわけで、それをそのままフロントシングルとして使うと程よい歯数のクランクになります。


痒い所に手が届くFSA!

画像だけ見てもさっぱりかもしれませんがこちらはインナーが39Tになっているクランクです。これだけ大きければアウターを取っ払ってそのままフロントシングル用として使えます。


微妙に書き忘れていましたが、フロントがダブルになっているクランクをシングル化…つまりアウターリングを取り外す場合はアウターリングの厚さ分の隙間が空いてしまうのでボルトを交換しなければいけません。

<参考>
https://amzn.to/2yukYiG

これが地味に高額なんですよねぇ…足元を見られている感がすごい。まぁスラムよりは安くあがりますけども。

④ MTB用のクランクを使う

本格的にMTB用のクランクを使うやり方です。

こうなるともう『好きにして下さい』としか言えなくなります。メーカーもチェーンリングも山の様にあるので好きなモノを使えますね。

ただまぁこうなると選択肢が多すぎて大変です。選択肢が多い場合は絞り込みが必要となり、その場合に有効なってくるのが「トレンド」です。

自転車業界はトレンドに大きく左右される世界であることは今更でしょう。今現在のMTBワールドで無視することが出来ないトレンドは「30mmスピンドル」というものです、多分。ナローワイドはもう常識の範疇ですね。

スピンドルというのは「クランク軸の太さ(直径)」のことです。要するにパイプの太さが30mmのものを言います。

ロードバイク界ではBBの大型化で剛性を高めるというのが当たり前の手法ですが、MTBもこれと似たようなことが起きているわけです。『太ければ硬いっしょ?』という至極真っ当な理由を持ってメーカーは新製品をばら撒きます。

ここで出遅れているのがまたシマノです。

シマノクランクは24mmで統一されているのでちょっと困ったことになっています。MTBでシマノクランクを見かける割合が低いのはコレも大きいと言えましょう。軸径も細ければナローワイドですらない(可能性のある)チェーンリング。シマノを使う理由はありません。

ロードバイクはスムーズなペダリングが原則なので必ずしも軸径が太い必要はありませんが、MTBは急激にペダルを踏みこまないといけない場合が多いので剛性は高い方がアンパイです。

…というわけで、MTB用のクランクを使うとなると『どうせMTBのクランクを使うなら30mmスピンドルがいいよね』となってしまうわけです。

30mmスピンドルのクランクについて

30mmスピンドルのクランクを使うためには「30mmスピンドルのクランク」と「30mmスピンドルのクランクに対応しているBB」が必要になります。

とりあえずクランクから見ていきますと、30mmスピンドルのクランクを作っているのはROTOR、RACEFACE、FSAといったメーカーさんです。中華はではまだ見かけませんね。

この中から選ぶとしたらおそらくRACEFACEが筆頭でしょう。

RACEFACEにはグレードがたくさんあるのでそれはそれでメンドクサイのですが、妥当なラインとして提示するのであればAtlasになるはずです。

…まぁ妥当と言っても高いですけどね。

<参考>
http://www.wiggle.jp/race-face-atlas-cinch-%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%A0/

アームだけで2万円もします、yeah!

とはいえこのAtlasシリーズはクランクの長さが選べる範囲が広く(30mmスピンドルとしては貴重な165mmがある)、対応BBの種類も豊富なので色々な面で楽です。デザインもオフロードから街乗りまで幅広く使えそうな感じになっています。

公式サイトが見たい場合は下をどうぞ。wiggleの方が分かりやすいですけどね、軽いですし。

<参考>
https://www.raceface.com/products/details/atlas-cranks

クランクを選んだら次はBBです。

今現在フレームにホローテック2BBが付いている場合はこんな感じのBBを選らべばOKです。

<参考>
https://store.shopping.yahoo.co.jp/worldcycle/raf-i-r-150.html?sc_e=slga_pla#ItemInfo

これは要するにホローテック2BBの軸穴を30mmまで拡大したものですね。必然的にベアリングが細くなりますので破損の可能性は高くなります。割れたらまた買いましょう。不安であれば要ストックです。

本来であればシマノに作って欲しいところですが、前記した通りシマノは今のところ24mm径なので作るはずがありません。

これで終了…といいたいところですがこのクランクはアームだけなのでチェーンリングが別売です。

<参考>
https://amzn.to/2NVhJ8W

探すのが面倒ですがCinchダイレクトマウント規格で40Tくらいのものもあることにはあります。RACEFACEも昔は40Tくらいのサイズのものを売っていたのですが最近では全然見かけません、生産中止なのでしょうか。

もしCinchダイレクトマウント規格のクランクを選ぶ場合はチェーンリングを確保してからの方がいいですね。見つからない場合は金属の塊にしかなりません。

仮に上で取り上げたもので組むとすると…

・クランク ¥20000-
・BB ¥5000-
・チェーンリング ¥10000-

関税やら何やらを含めると4万円くらいの出費です。フロントをシングル化するためだけに4万円…素晴らしき道楽と言えますね。

『剛性なんてどうでもいいっすよ』と言う場合であればテキトウなMTBグレードのシマノクランクを買ってからサードパーティメーカーが作っているナローワイドチェーンリングを使うというのが一番楽だったりもします。その場合はBCDに注意しましょう。

まとめ的な何か

というわけでフロントシングル化の話でした。知識としてはナローワイドを知っておけば最低限のことはクリアです、多分。

まとめとして必要経費やら入手の手間やらを考慮して簡単な順番にランキングしておくと…

・アウターを取っ払ってインナーチェーンリングを変更する
・一般のロードバイク用フロントシングルクランクを使う
・ミニベロ用のクランクを使う
・スラムのロードバイク用のフロントシングルクランクを使う
・MTB用のクランクを使う

…といった順でハードルが上がります。ミニベロ用のクランクは作業としては簡単ですが探すのが面倒なのでこの辺の位置でしょう。

最終的にはインナーチェーンリングを大きくして終わることが多くなりそうですね。

<次回の記事>
アリエク通販① FSAのよく分からんクランク+シングルクランク用チェーンリングボルト

次回の記事でフロントシングル用のクランクを購入しています。

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