さて、自転車ユーザーであれば一度は乗ってみたいと思われるだろうファットバイクという謎の自転車ですが、これは『遊びがメインのバイク』だと断言してよいと思います。
「MTBではなくBMXに近い」と言えばイメージしやすいのではないでしょうか。そんな自転車です。
『ファットバイク=走破性が高い』は過信するべからず
ファットバイクの売り文句としては「太いタイヤでどこにでも行ける走破性がある」というものが代表的ですが、これに関しては少し間違っているというか『時と場合に』よります。確かに太いタイヤは未舗装路に対して強力に対抗出来ます。スリップなんてまず起こりませんし、単純にタイヤが太くて安定性が高いので手放し運転も簡単です。滑りにくく倒れにくい、これだけを考えたら「ファットバイク=走破性が高い」と言えるかもしれません。
しかしながら、Qファクターが広いことを考えると「ファットバイク=走破性が高い」とは強く言えなくなってしまうと思うのです。
・Qファクターの問題
ロードバイクに乗られている方であればQファクターの重要性が周知のところだと思いますが、ファットバイクはそのタイヤ幅のため必然的にQファクターが広くなります。これが普段ロードバイクに乗っている人間からすれば困りもので、ここまでQファクターが広くなってしまうと踏み切るのが難しくなってしまうんですね。Qファクターをご存じない方にざっくり説明すると、Qファクターとは「左右のペダル間の距離」のことです。これが広いとガニ股になります。
現在使っているファットバイククランクのQファクターは228mm、一般的なロードバイクであれば150mmを少し切るくらい(※シマノクランクは147.5mm)なので、8cmもの違いが出ます。
<参考>ファットバイククランクの例
http://www.chainreactioncycles.com/jp/ja/race-face-aeffect-cinch-%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%A0/rp-prod166293
自転車に乗られている方であれば分かると思いますがQファクターが8cmも違うというのは完全に別の乗り物です。結果としてクランクを踏み切ることが難しくなるので、エンデューロというか登る場合においてかなりの違和感があります。本当ならもっと踏めるはずなのに微妙に踏み切れないもどかしさ…。
こうなると『ファットバイクよりも普通の(?)MTBの方が走破性はいいんじゃないのかな』と思ってしまいますよね。
タイヤが太いことは利便性であるとは言っても『それ以上太くしても効果としては反映されないんじゃないのだろうか』というボーダーはあります。ロードバイクのタイヤも肥大化している傾向にありますが、あれが5cmを超えるような日は決して来ないでしょう。
何事もほどほどです。
・単純に速度が出ないという問題
ファットバイクは原則的に速度が出ないようになっている自転車です(ホイールの構造上タイヤの空気圧を上げれないので)。そんなわけで、ファットバイクで草むらを突っ切ったりするのは意外に大変だったりします。自転車というものは速度が出ないと車体が安定しませんからね。『もっと速度が欲しい!』という要求に中々応えてくれないのがファットバイクです。
これに関してもフィールド次第なのでしょうけれど過度に特殊なフィールド以外では一般的なトレイル系MTBの方がずいずい進めると思います。
ファットバイクの用途とは
上記の理由から、ファットバイクの用途は砂地や積雪といった「太いタイヤでないと本当にどうしようもない場所」くらいしか出番が無いと判断できます。つまり、ファットバイクは例外的なフィールド以外では基本的に役に立たないものであり、未舗装路を前提にするとしてもMTBの方がバランスとして優れているということです。
oh…
そんなファットバイクのパフォーマンスを活かすとしたらファッション的なベクトルしかないでしょう。
今現在使っているファットバイク「WO」はそれはそれは目立ちます。黒だったらそこまででは無いと思いますがビビットオレンジですからね…。小学生は『何それ!』と声を上げてと寄ってきて、老人は『あんたそれバイクね?』と話しかけて来ます。
とはいえ別にファッションになることが悪いわけではありません。BMXのような感じでトリック的な要素を楽しめば良いというだけのことであり、こうすればコンクリートの上で使うことも正しいアプローチであると言えるでしょう。
今にしてみればSサイズを選んでおいて正解だった強く思います。
ファットバイクを舗装路で使う場合の注意点
ファットバイクを購入する場合の注意点ということにもなりますが、絶対に知っておくべきことは「ロードノイズが極めて大きい」ということです。極太ブロックタイヤを舗装路で使うとパターンに当たってとてもうるさいのです。ファットバイクのホイールは構造上高圧に出来ないという背景もそれを後押ししています。ロードバイクのタイヤは指で押してもそうそう凹みませんが、ファットバイクはベコベコです。タイヤが潰れることで疑似的にサスペンションの役割を果たします。
パンクしたタイヤは潰れて道路との接触音が大きくなりますよね、パンクは極端な例だとしても低圧だとこういうことが起きます。
そのようなわけでファットバイクを舗装路で使うとしたらトレッドパターンが舗装路用になっているタイヤを選んだ方が良いです。
ブロックタイヤだと抵抗もすごいですからね…。基本的に「タイヤが転がる」ということが無いので常時クランクを回さないと車体が進みません。これは疲れますし速度が出ないということでもあるので舗装路でMTBのようなブロックパターンのタイヤを使うことはデメリットでしか無いと言えます。
舗装路用ファットバイクタイヤの選択肢
…ところがファットバイクの舗装路用スリックタイヤって選択肢がほとんどありません。個人的に確認できているのは「SURLY black floyd」「VEERUBBER VEE SPEEDSTAR KEVLAR」「SE Bikes Chicane」の3つしかありません。black floydは一時期生産中止になっていましたが復活したみたいですね。
SURLY black floydは3.8インチで1050g。VEERUBBER VEE SPEEDSTAR KEVLARは3.5インチで1010g。SE Bikes Chicaneは3.5インチサイズで重さが分かりません。まぁワイヤービードらしいのでおそらく重いとは思いますが…。
値段はどれも1本で1万円近くします。"嗜好品"であることを考えればこれから値段が下がるということはありえないでしょう(※寧ろ上がると思います)。
SURLY black floydは通販もされていますが売り切れである場合がほとんどなのでSURLYの取扱店に直接注文をする方が良いでしょうね。
<参考>SURLY black floyd
https://store.bluelug.com/surly-black-floyd-tire-black.html
VEERUBBERのタイヤは普通にamazonで売られています。
<参考>VEERUBBER VEE SPEEDSTAR KEVLAR
https://www.amazon.co.jp/VEE-RUBBER-%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A4-SPEEDSTAR-KEVLAR-26%C3%973-5/dp/B00JKEDUZ4/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&qid=1534057417&sr=8-1&keywords=VEERUBBER+VEE+SPEEDSTAR+KEVLAR&linkCode=ll1&tag=sakuranetwork-22&linkId=744de6207a0d1f7a018d1b42b61f3fda&language=ja_JP
また、楽天でも販売されているのでポイントが欲しかったり余っている場合はこちらの方がいいかもしれません。
【VEE RUBBER ファットタイヤ】VEE SPEEDSTAR KEVLAR 26×3.5自転車 ファットバイク 26インチ タイヤ
価格:9720円(税込、送料無料) (2018/8/12時点) |
VEERUBBERの方が1000円安いです。前後合わせれば2000円、これをお得と判断するかどうか…。
楽天を経由してのポイント還元やまだ楽天カードを発行していない場合はカードを作ることでポイントを発行して5000円を割り引くことが出来ます。これは下のポイントサイトを経由することで還元率を増やしたりすることが出来るので上手く使えば前後合わせて1万円くらいで購入出来ます。
<参考>
https://hapitas.jp
ポイント還元率としてはyahooショッピングの方が上なのですが、残念ながらyahooショッピングには取り扱いがありません。いやまぁ正確にはあるのですが2割増しで販売されているストアしかないので使う意味がありませんね。
ファットバイクを買うならこれも必要だ!
はい、もちろんドロッパーシートポストです。舗装路だろうが未舗装路だろうが必須です。
未舗装路であれば言わずもがな必要ですし、舗装路であってもフロントアップ(※フロントタイヤを上げるトリック、ウイリーの前段階)くらいは出来ないと楽しくありません。このような場合はサドルが高いと難易度がとても高くなってしまいますからね。
しかしながら、このドロッパーシートポストがまた高い。
相も変わらず最安値はwiggleです。検索ボックスに「ドロッパーシートポスト」と入れるとあれこれ出てきますが、一番安いものでも15000円くらいすると思います。
<参考>wiggle
http://www.wiggle.jp/
wiggleに関しては少しでもお得に使うためにポイント還元サービスを受けましょう。これに関する記事は下のリンク先を参照されて下さい。
<参考記事>
自転車ユーザー必読、wiggleから現金還元を受ける購入方法!
今現在使っているドロッパーシートポストのトラベル量(可動域)は125mmのモノですが、これだけあれば十分にドロッパーの恩恵を受けることは出来るはずです。ひとつの参考にされて下さい。
ファットバイクにフロントサスペンションは必要か?
ファットバイクの購入を検討される方であればそれなりに悩むことになるであろう「フロントサスペンション」という高額オプション。大手ブランドであれば大抵の場合で完成車に付いているモデルが並びます。金額としては+10万円くらいが相場です。ファットバイク用のフロントサスペンションは実質的にRockShoxの独占市場となっているので値段が中々下がりません。
<参考>RockShox bluto
http://www.dirtfreak.co.jp/cycle/rockshox/products/bluto/2542/
上記のモノが定番品です。これしか選択肢が無いといってもあながち間違いでもありません。ちなみにRockShoxはSRAMの子会社のようなものですのでコンポーネントとしてはSRAM関係の方が統一感が出ます。
…で、ファットバイクにおけるフロントサスペンションの必要性なのですが「街乗り」であれば無い方が良いんじゃないかと思います。
この理由としては2つありまして、一つ目はサスペンションが沈み込むことで走行性能が下がってしまうこと。2つ目はフロントが重くなることでトリックが難しくなることです(バイク本体の重量も増えますし)。
サスペンションはロックして使うことも出来ますが、ロックしたまま使い続けるとサスペンションそのものが壊れます。街乗りであればサスペンションの出番は無いと思うので最初から付いてない方が楽です。
2つ目はトリックで遊ぶ場合の都合ですね。
ファットバイクは中々フロントが持ち上がりません。BMX等と同じような感覚でいるとかなり難しいでしょう。これに関してはせめてフロントホイールだけでも軽くしたいと思ってはいますが値段が高いので中々…。
ファットバイクを最大限楽しむならハイスペックを選ぶしかない
勝手に断言してしまいますがファットバイクを最大限楽しむならハイスペックを選ぶしかありません。この記事もこれが言いたいがために書いているようなものです。では『ハイスペックなファットバイクとは何か?』という話になりますが、これはキャニオンのDUDE以外にまともな選択肢がありません。
<参考>キャニオン
https://www.canyon.com/ja/mtb/dude/
他の選択肢は…うーん…アイカン?
<参考>アイカン
https://www.amazon.co.jp/ICAN-%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%B326%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%81-%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AF-Rockshox-Bluto%E3%83%95%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%AF/dp/B0185OD5YK/ref=as_li_ss_tl?s=sports&ie=UTF8&qid=1534953431&sr=1-31&keywords=%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%B3%E3%80%80%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AF&th=1&psc=1&linkCode=ll1&tag=sakuranetwork-22&linkId=ba432d80504d1fb7750b3d9d7f7d393d&language=ja_JP
上のヤツがカーボンフレームでフロントにまともなサスペンションが付いているものですが、キャニオンの1.5倍くらいお値段がします。キャニオンよりパーツがしょぼいのにこの価格。
価格的な対抗馬としてはサルサのカーボンファットバイク「BEARGREASE CARBON NX1(30万円くらい)」もありますが…。
<参考>BEARGREASE CARBON NX1
http://ride2rock.jp/products/101516/
サスペンションが付いてないんだもの‥‥。まぁ街乗りでサスペンションは不要なのですけれど。
やや話が脱線しますが、ロードバイクであればハイエンドモデルでなくても十分楽しめます。
何故かと言えばロードバイクのパフォーマンスはライダーで決まるものだからです。乗り味の好みや乗り方もそれぞれ違いますので、ロードバイクは一見して敷居が高いようで変なことろでフレキシブルだったりします。
ロードバイクはやることも単純です。バイク間にグレードの差はあっても「なるべく疲れずに速く進む」ということは共通しています。このように目的がシンプルなので機能差のなんてあって無いようなものです。普通に走る分ならエントリーでもハイエンドでも同じです。
ところがMTB…さらにファットバイクのような特殊なバイクはとにかく「機能」の塊です。この機能というものは人間側がどうがんばっても覆せません。『世界で一番柔軟性のある人間ならMTBのサスペンションが不要になる』なんてことはありません、いるものはいります。
WOに乗りながら『これはフロントサスペンションあったら気持ちいいだろうなぁ…』『あと2kg軽かったらもっと軽快に進めるだろうなぁ…』と強く感じます。
そんなわけで『ファットバイクを最高に楽しみたい!』という方は多少無理してでもDUDEが正解です。
ここではDUDE紹介していますが、これを超える正解もあることにはあります、それは電動アシストが入っているファットバイクです。
ファットバイクのような「基本速度が出ない自転車」にとって電動アシストは神の一押しです。飛んだり跳ねたりは難しくなりますが街やトレイルをずんずん進む分には最高としか言えません。
ただ日本では選択肢が無いんですよねぇ…海の向こうではガンガン売っているのですけれど。
E-BIKEというと何となくエレクトロな感じがして日本国が得意そうな気もしますが、残念なことにE-BIKEの本場はドイツです。まぁドイツも工業国家なので当然と言えば当然なのかもしれませんが。シマノはすごく頑張ってるのですがまだまだ業界が追い付いていない感じですね。
キャニオンが電動を出してくれることを期待しています。
私は雪国に住んでおり、雪道を走ることができるファットバイクに興味があるのですが、
返信削除細いタイヤに交換することはできないのでしょうか。
雪が降る季節だけファットタイヤをつけ、
それ以外では普通の細いタイヤに交換出来たらいいなと考えています。
あれだけ太いタイヤを装着できるのだから、
それ以外のタイヤなんて余裕だろうと素人ながらに思うのですが、なにか問題があるでしょうか。
お暇なときにお返事いただけると幸いです。
どうもです、暇なのでお返事を。
返信削除ホイールにはリム幅というものがありまして、その幅で装着できるタイヤの幅がある程度決まるようになっているんですね。今使っているファットバイクホイールのリム幅だと3.5インチが最小値です。
というわけで、買った時についているホイールに細いタイヤを付けるのは不可能だと言えます。
『ならホイールを変えればいいのでは?』ということになりますが、ファットバイクはホイールを変えるのが大変なんです。
ホイールにも幅があるので(※エンド幅といいます)、自転車のフレームと合わなければ使えません。一般的なロードバイクだと前が100mm・後ろが130mmと固定されているのでホイールも簡単に販売されているのですが、ファットバイクは極めてイレギュラーなフレームをしているのでそういったものは中々市販されないわけです。
もしファットバイクに細いタイヤを付けたいということになるとホイールをオーダーすることになると思います。うまいこと市販品が見つかればそれを流用できますが可能性としては低いでしょうね。
…とはいえ、ファットバイクのような自転車は環境に合わせてタイヤを変えることなんてよく考えれば当たり前であるのでホイールを2種類くらい持っておくのは普通なのかもしれません。ディスクブレーキはホイールの交換も楽ですからね。山の時は太いホイール、街のときは細いホイールと切り替えるのはとても合理的です。
気になったので馴染みのお店にホイールオーダーの価格を聞いてみることにします。もしかしたら記事化するかもしれませんのでまた覗きに来てください。
すいませんちょっと間違いが…
削除誤→ホイールにも幅があるので(※エンド幅といいます)
正→フレームにも幅があるので(※エンド幅といいます)
ですね
丁寧に答えていただきありがとうございます。
削除ホイールをオーダー・・・おそらく市販のものよりもかなり高くなるのでしょうね。
ディスクブレーキはホイールの交換が楽だというのは初めて聞きました。
ホイールの交換すらしたことのない人間が意見する資格はないと思いますが、
リムブレーキのほうが仕組みが単純そうに見えるので、
ディスクよりはリムのほうが交換は簡単そうに思えるのですが。
また違うブログで、油圧式ディスクはブレーキ位置の調整が難しいとありました。
話はそれましたが、もし記事になりましたら是非とも見させていただきます。
あらためまして。
返信削除ブレーキについては個人の考え方の違いもあるでしょうね。リムに慣れている人間からすればリムの方が楽でしょう。個人的にもリムの方が好きです。とりあえず当てとけば止まりますからね、分かりやすい!
油圧式ディスクのブレーキ位置の調整が難しいというのは・・おそらくパッドとローターのクリアランス調整のことを言っているのだと思います。
確かにここはリムブレーキよりも面倒な作業になりますが、油圧式ディスクの制動性はリムブレーキとはまったく比較にならないほど高いので雑な調整でも実際のところ問題ありません。完璧に調整したリムブレーキよりもテキトーに組み立てた油圧ディスクの方が10倍効きます。
よっぽど神経質にならない限りはもうディスクブレーキだと思いますよ・・とリムブレーキ派の人間が書いてみたり。
ホイール交換そのものはディスクの方が楽ですよ。リムブレーキだとホイール位置が一定にはならないのでブレーキ調整を必ずやらないといけませんからね。リムブレーキの場合より多少時間はかかりますけれどこれはサイクルロードレースでもない限り関係のないところでしょう。