何故アイドルは「恋愛禁止」なのかという話

【推しの子】という漫画を読みまして。

https://shonenjumpplus.com/episode/13933686331661632099

かなりのヒット作らしいので内容については既にご存知の方も多いでしょう。一見してコメディっぽいのですが中身はサスペンスです。人気があるのはこの辺のバランスではないかと思います。

漫画でサスペンスってたぶんすごく難しいです。推理性を入れすぎると推理マンガになっちゃいますし、社会性を入れすぎるとドキュメンタリーになっちゃいますし、非現実性を入れすぎると最早ファンタジーです。

推しの子は特に若い人に受けているらしいですが、これはyoutuberや2.5次元舞台といった…まぁ、言ってみれば「チャラい要素」を意図的に取り入れることでハードルを下げているように見えます。全体的に計算されている雰囲気です。タイトル枠の【】にも意味がありそうです。作ってる人はとても頭の良い人なのでしょうね。

…で、作中において『アイドルの恋愛禁止はおかしい』的な部分が登場します。

この問題は何やら根深いみたいですね。「アイドル 恋愛禁止」で検索すると色々出てきます。中には地裁の判例を持ち出して検証している方もチラホラといらっしゃいます(※判例があることを知ってびっくり)。

ぼくはアイドルという存在に基本的に全く興味が無いので彼女たちが恋愛をしようが一切関係ないのですが、そんなぼくでさえ『アイドルは恋愛禁止の方がいいよ』と思います。そんな話です。

長ったらしく書いてもアレなので結論から書いてしまいますが、アイドルを恋愛OKにしてしまうと「自称恋人」が大量に発生して大変なことになります。

『私付き合ってる人がいるから！』なんて言っても『そんな男別れてオレと付き合え！』という反応が山ほど返ってくるでしょう。だって恋愛OKなんですから。どこかの誰かが求めるのだって当然にOKになります。

より大変なのが『既にオレは○○ちゃんと付き合っている！』と言ってくるお客さんです。こんなこと言ってくる人に対して対応なんて無理でしょう。会場でお客さん同士が争うことも当然に起こるでしょう。当事者からすれば「自分の女にちょっかいを出してくる男」なわけですからね。

つまるところ、アイドルの恋愛をOKにすると「サイコパス気味のストーカーを歓迎する」みたいな感じになっちゃうわけです。

アイドルファンの大部分が暴走しないのは「アイドルは恋愛禁止」＝「アイドルは誰のものにもならない」という前提を持っているからです。世に言う「ガチ恋」の方々が社会的に問題にならないのもその枠を壊さない理性的な努力をしているからです。

「誰かのものになる」となればこの前提は破壊されますし、前提が破壊されるということは全く違う行動・結果を生むということになります。

ざざっと検索した限りだとアイドルの恋愛禁止は『お客さんが疑似恋愛をしているのだから礼儀として』みたいなものが大部分でしたが、ぼくはそれは全く本質ではないと感じます。

アイドルの恋愛を禁止する理由は単純に『自分の身を守るため』です。恋愛禁止は「盾」なんですよ。盾をとっぱらって戦場に出たら危ないです。

そんなわけで、お客さんとコミュニケーションをしなければいけないアイドルが「恋愛禁止」するのは絶対的に正しいです。まぁ、良いor悪いはまた別問題っぽいですが。