我々ロードバイクユーザーにとって永遠の命題である「ポジションの決め方」の話です。
記事としてはやや長いですが全部読めば目指すべきフォームのイメージが出来るようになるはずです。ちなみにクロスバイクであっても同じやり方で出せます。
ポジションは変わり続けるものである
『このポジションがベストだ!一生コレで行く!』…なんてことは残念ながらありえません。ロードバイクを乗りこむにつれて、あるいは歳を取る事につれてポジションは変わり続けます。では次へ。
ポジションと「ダイエット本」
出版不況と言われる現代において安定して発行を見込めるのが「ダイエット本」です。これまで幾度となく専門家やタレントがダイエット本を発行し、同時に消えていきました。この現象はダイエット本というものが無意味であることを示しています。
もしダイエット本というものが有効であるなら『これだ!』という定番の一冊が残るはずなのですが、ダイエット本が発行されて数十年が経った今でも「定番の一冊」は生まれませんでした。
優れたものは必ず残り定着します。良いものとは新しいものではありません、古くから残り続けているものです。
これはロードバイクのポジションにおいても似たようなことが言えます。専門雑誌で数カ月に一回は組まれる「ポジション特集」が全てを示唆しています。『これぞ!』というものが無いから繰り返されるわけですね。
『それならブログ記事だって同じでしょ?』とツッコまれると思いますが、それは分量の問題というか何というか…。
ロードバイクの正しいポジションを文章で説明することは可能ですが、これはとても「大雑把」なことしか言えません。その大雑把なことを守りながらあとは身体が望むように微調整していくのがポジションです。
そのようなわけで、どうやっても書籍のようなボリュームは作れません。
簡単に書けばペラ紙一枚で済みますし、お金を取れるようなものでもありません。極めようとすればそれは個人の感覚の領分です。他人が出来ることなんてありません。
では本題へ入ります。
以下から正しいポジションについて書いていきますが、具体的にポジションを誘導するような写真は載せません。そんなことをしても余計な先入観が入り込むだけですからね。
写真を見ながら決めるなんてことは絶対にしてはいけません、人の身体はそれぞれ違いますので参考になんてなりません。『プロ選手(しかも欧米人)がこんな感じなので~』なんて狂気の世界です。そんなことを言っている店員がいたら通報ものです。
正しいポジションの出すために守る3つのこと
ロードバイクにおいて正しいポジションの出すためには3つのことを守る必要があります。なぜ3個なのかといえば自転車と人体が接触する箇所が「ペダル」「サドル」「ハンドル」の3か所だからです。特に難しい話でもありません。
そんなわけでこれさえ守っておけば「正しいポジション」は出せます。mm単位を気にするべきなのはクリートの位置くらいです。人間の身体なんて毎日違いますからね。
では、この3個の説明に入りましょう。
① サドルの高さが「脚を大きく回せる位置」にあること
とにもかくにも「脚を大きく回すイメージを持つ」ことが正しいポジションの第一歩です。これについてはどなたも異論はないでしょう。まぁ正確に言えば脚ではなく根本の股関節ですが。脚をちょこちょこ動かすのは歩くときです、走る場合はかならず大きく動きます。
我々ホビーライダーとプロ選手のペダリングにおいて最も違うのがここです。ホビーライダーはほとんど場合で脚を大きく回せていません。
プロ選手のペダリングがカッコいいのはサドル位置が高いからだけではありません、脚を大きく回せているからカッコよく見えています。
自分のペダリングを動画撮影して比較すれば一目瞭然で分かります。プロ選手だと『大腿四頭筋が地面と平行になっているのでは?』というほどに大きく回しています。これが正しいペダリングです。
これをホビーライダーにいきなり『やれ』と言われても基本無理です。100%無理とは言いませんが99%無理です。
脚を大きく回す場合はハムストリングスを使うしかありませんが、ハムストリングスを使ったペダリングはトレーニングを積まないと出来ません。そんなわけで出来ないのが普通です。
ただでさえ日本人は日常的にハムストリングスを使いませんので仕方がありません。プロのアスリートでさえハムストリングスを使えてない選手の方が多いです。サッカーなんかを見てると良く分ります。
これについて我々に責任はありません。悪いのは教育であり、責任があるのは文科省です。
<文部科学省>
なぜ「正しい歩き方」を教えないんでしょうね。日本人が総じて猫背なのはこのせいですよ。
…とはいえ、正しいポジションはこの「脚を大きく回す」ことが前提なので避けて通れるものでもありません。出来るようになりましょう…そのうちに。
脚を大きく回す場合の障害となるのはハムストリングスだけではありません。ここで関係してくるのが「サドルの高さ」です。
サドルの位置が高ければ高いほど脚の可動域は狭くなります。こうなると、どれだけハムストリングスが発達していても「大きく回すペダリング」は出来ません。
大抵のホビーライダーはサドル位置を高く設定してしまいますがこれが足を大きく回せない理由です。可動域も狭ければハムストリングスも未発達、そんな状態で足を大きく回せるわけがありません。
そのようなわけで、サドルは脚を大きく回せる位置まで下げましょう。
バイクの見た目は残念ながら悪くなりますが仕方がありません。その代わりペダリングがカッコよくなるのでルックスバランスとしては「トントン」です。そう考えて誤魔化しましょう。
『それならツールの選手とかもっとサドル位置低いんじゃないの?』と思われる方も多いと思いますが、これは脚の「どこが」長いのかという違いによるものです。
欧米人の脚が長いのは周知のところだと思いますが、そのどの部分が長いのかということを考えたことがある人は少ないのではないでしょうか。
欧米人は膝から下が長いのです。膝から下が長いからこそ『大腿四頭筋が地面と平行になっているのでは?』という大きなペダリングになるわけです。
膝下が長いのは自転車において絶大なメリットです。ここが長ければ平行してクランク長さを伸ばせますからね。本気で出力を上げようと思えばクランク長さは無視できません。実際、無理矢理長いクランクを使われる方もチラホラといらっしゃいます。
まぁ、とにかく『サドル高すぎはマジでダメ』だということです。では次へ。
② サドルに座る部分が平行であること
②はちょっと難しくなりますがそれほど深く考える必要はありません。「サドルは地面と平行にする」こと、これは最早通説になっているのでロードバイクをはじめたばかりの方であってもご存知の場合も多いかと思います。そしてこれは正解です、安心して下さい。
とはいえ「どこ」が地面と平行になるのかということはあまり書かれていないんですよね…。
地面と平行にするべき部分は「サドルに座る部分」です。ここをしっかりと平行にしてください。
これに関しては写真を見ないと分かりにくいかもしれませんね…。
これが良い例です。
サドルの形状は様々ですが、お尻を乗せる部分が湾曲しているようなサドルは前部分がちょっと高くなるはずです。そうしないと前にズルズルと動いてしまいます。
このサドル角度も見た目の問題が絡みます。
まぁ前が上を向いているとカッコよくないですからね…。メーカーの商品写真でも大抵の場合で「前下がり」になっていますので『これが正解なのだろう』と誤解してしまう方も多いです。
とはいえこれは間違いです。
そうやって前下がりで乗るから尿道を痛めることになるわけです。メーカーさんも写真映りを良くするために前下がり気味に設定しているだけです。雑誌の写真だって前上がりにして撮影するとメーカーからNGが入ります(マジで入ります)。
雑誌やメディアはどこまでいっても「スポンサー様」には逆らえません。インプレ記事だってメーカーさんの検閲済みです。
前下がりの利点としては「ペダリングがしやすくなる」ということがありますが、①で挙げた通り前下がりでペダリングをしても千切りペダリングになってしまうので実際のところ意味はありません。
この辺は合わせ技でお店の人も騙しにくるんですよねぇ…。
確かにサドル位置を高くして前に倒せばをとりあえず回転数を稼げるようになりますし、シート角を立てるポジションになるので「加速感」を得ることが出来ます。
そうするとお店の人は『ほら、速くなったでしょう?ケイデンスも上がりましたよ』とドヤ顔ができるわけですが、そんなポジションではどうしても短時間しか持ちません。
お店の人もポジション調整でロングライドに付き合うようなことはないのでその場はとりあえずバレません。見事に逃げ切り成功です。まさにサイクルロードレース、エリック・デッケルか。
お客さんが無知であることをいいことにひどい商売です。まぁ短時間しか走らないなら別に問題はありませんけれど。
個人的にフィッティングサービスを受けたことはありませんが、お店で頼んで『これが正しいポジションです、料金は○○円です』というようなところはダメだと思いますよ。
『これが正しいポジションです、料金は○○円です、しばらく走ってからまた来店してください』が正しいフィッティングサービスでございます。
断言しますがホビーライダーは1 DAYフィッティングをやったところで正しいポジションなんて出せません。
フィッティングで恩恵があるのは「完全に何も知らない初心者」か「しっかり走りこんでいる熱心なサイクリスト」の二択です。大部分を占める中間層ユーザーはサービスを受けようがセルフで調節しようが大して変わりません。
なんだか微妙に話がずれましたが、とにかくサドルは「座るところ」を平行にするということを覚えておいて下さい。
サドルの前後位置については脚を大きく回せる場所を意識して探してみて下さい。
とりあえず限界まで後ろに下げた位置から少しずつ前に移動していくと良いです。シ最近のロードフレームはシート角が立っているものが多いので後ろに標準を合わせた方がてっとり早いです。シートポストについてもオフセットされているものを使った方が良いですね。
『座る位置とか言われてもよく分からないんだけど?』と言う場合はサドルを幅広のものに変えると有効です。
最近一部で「幅広サドル」トレンドが起きていますが、これだと座る位置が分かりやすくなります。
ロードバイクのサドルは横幅が細いですね。これは前後に動いてポジションを変えることが想定されているためですが、そのせいで『どこに座っているのかいまいち分からない』ともなります。
幅広サドルだと前後移動の範囲が狭いので「ここに座っている」という感覚がずいぶんと分かりやすくなります。
このようなサドルは何でもいいとは思いますが、個人的におすすめするのはアリエクで売られている「EC90」というものです。
これはSPECIALIZEDのPOWERを丸パクリしたものなのですが…まぁその辺は各自で検索されて下さい。山ほど出てくるはずなので。ちなみにEC90はアリエクで1500円~2000円くらいで買えます。
このようなサドルは何でもいいとは思いますが、個人的におすすめするのはアリエクで売られている「EC90」というものです。
これはSPECIALIZEDのPOWERを丸パクリしたものなのですが…まぁその辺は各自で検索されて下さい。山ほど出てくるはずなので。ちなみにEC90はアリエクで1500円~2000円くらいで買えます。
③ 上ハンドルと下ハンドルが違和感なく持てること
最後は当然ながらハンドルの話になります。これは結論から行きましょう。ハンドルは上ハンドルだけではなく下ハンドルもスムーズに持てる位置にセッティングして下さい。
我々ホビーライダーはどうしてもハンドル位置を下げたがる習性があります。これも「見た目問題」によるところが大きいですね。
ハンドル位置は低い方がカッコいい、確かにこれは事実であり真理です。とはいえハンドル位置を下げ過ぎたらせっかくのドロップハンドルの意味がなくなってしまうのもまた事実です。下ハンドルが握れなくなりますからね。
『下ハンドル使わないんだけど?』という方もいると思いますが、うーん…。
今までは『下ハンドルでブレーキをかけないと制動力が稼げないよ』ということで下ハンドルを使用する理由が作れたのですが、今は制動力抜群のディスクブレーキロードバイクがごく当たり前に販売されています。
この場合は上ハンドルでも普通に止まれてしまうので、必ずしも『下ハンは絶対に使うから!』と言える時代ではなくなってしまいました。
…とはいえ、①と②をきちんと守ればハンドル位置が下がりすぎているとペダリングがスムーズにいかなくなるはずですので、自然とハンドルはそれなりの高さに来るはずです。
ハンドルに関して補足しておくと、ブラケットの角度も問題となる場合が多々あります。
これも写真が必要あった方がいいですかね…。
これがあまりよろしくない例で…
これがよろしい例です。
ブラケット部分が地面と平行になることは基本的にありえません。
何故かと言えばロードバイク(というかドロップハンドル全般)は「引手」も使うからです。ハンドルを掴んで身体に向けて引くことができないといわゆる「ダンシング」の意味がなくなります。
ダンシングとはバイクを振る作業ではありません。それは副次的に表れる現象なので実のところどうでもよかったりします。
ダンシングを超簡単に言えば『いつもより腹筋を使って踏むこと』です。『ヒルクラではダンシングをすると脚を休めることが出来る』というのは要するコレです。腹筋を使うから脚の負担が減らせるというわけです。
これは言い変えれば『腹筋を使わないと脚の負担が減らせない』ということでもあります。物理現象は残酷に平等です。どこかが休めばそれを別の部分が必ず負担しなければなりません。両方楽なんてことは絶対に起きません。
…で、通常よりも腹筋を使ってペダリングをするためには『サドルからお尻を上げる必要があり』かつ『ハンドルを身体に向けて引く必要がある』ので、結果的に「立ちこぎになってバイクを左右に振る動作になる」というだけの話です。
話を戻しますが、ブラケット部分が平行になっていると引手が使えません。引手を使おうとする場合は肘の延長線上に腹筋がある必要があります。そうなると必ずブラケットは立ち上がります。
そんなわけで、ブラケット部分が地面と平行になるようなことは基本的によろしくありません。
そんなわけで、ブラケット部分が地面と平行になるようなことは基本的によろしくありません。
この「ブラケット平行問題」はメーカーにも原因がある…といいますか、これはもうメーカーのせいだと思います。
シマノもスラムもブラケットにメーカーロゴが入りますが、このロゴがブラケットに対して平行になっている場合が多いですからね。
そりゃ何も知らない場合はこのロゴを基準にセッティングしてしまうでしょうよ。何故こんな罠をしかけるのか…。
ちなみにカンパーニョロはシフターの付け根にロゴを入れていることが多いです。おそらくはこの辺りのセッティングを気にしているからああいう汎用性のあるデザインになっているのではないでしょうか。流石オシャレの国です。
まぁ平地しか走らないのであればダンシングをする必要性が無いので平行でも問題ありません。ただ、我々日本のサイクリストは国土形状の関係でヒルクラを避けることは困難でしょう。『ダンシングはするもの』と想定しておいた方が結果的には楽です。
具体的な数値としては最低でも10度+2~3度くらいは欲しいところです。これはスマホの水平器アプリを使えば実測できます。
ブラケット角度についてはライドスタイルや背中の柔らかさといった要素が関わるので一律には言えませんが、大抵の場合で15度±2~3度くらいに収まると思います。
…というわけで①②③でした。
簡単にまとめると以下の三行で済みます。
・サドルの位置を高くしすぎない
・サドルは座る部分を地面と平行にする
・ハンドルは下ハンドルもきちんと使える高さにする、ブラケット平行もNG
ポジションを変えたけど速くならないんだけど?
『①②③を守ってポジションを変えたけど速くならないんだけど?』という意見が出ると思いますが、それは至って当然です。今までとは使っている筋肉が違うはずですからね。むしろ遅くならないとおかしいと思った方がいいです。「速度が変わらない」ということは「同じ筋肉が同じように使われている可能性が高い」と判断できます。そうなるとポジションを変えた意味がありません。
ただ、速度は低下しても「楽に走れる距離」は伸びているはずです。
個人的な意見としては「速く走れるポジションを維持して走れる距離を伸ばす」よりも「楽に走れるポジションを維持して強度を上げて行く」方を強く勧めます。
そんなにいきなり頑張るものではないです。ゆっくり頑張りましょう。
正しいポジションで走れているライダーの脚
正しいポジションで走るとより楽に移動できるようになります…というのは言うまでもないでしょう。これらが出来ていることを確認するためには脚を見れば分かります。要するにプロ選手の脚です。この辺は人それぞれな面はありますが、少なくとも膝から下にかけては細くなっているはずです。
ロードバイクに乗っていて「ふくらはぎ」が発達している人は正しいポジションを出せていない人である場合がかなり多いです。まぁ競輪とかを平行でやっていると判断できませんが。
サドルの位置が高すぎるとどうしてもふくらはぎを使ってペダルを踏むことになるので自然とそこが発達してしまいます。
ついでに書きますと、この場合は膝を痛めたり足の裏が変に痛くなったりする可能性も高くなります。「乗ってると足がつる」なんて現象が起きる場合はふくらはぎで踏んでいる証拠です。
ハムストリングスをできちんと上下運動が出来ていればお尻の贅肉が落ち、ふくらはぎを酷使することもなくなるので全体がシェイプアップされたようになっていきます。グランツールに出場するような選手はこの運動を極限まで追求しているのであそこまで細い下半身が出来上がるわけです。
これは日本人選手であっても同様です。ツアー・オブ・ジャパンなんかを見ていると表彰台に登る選手は大抵の場合でふくらはぎがスマートになってることを確認できると思います。
おまけ記事「良いロードバイクの条件」とは
せっかくなので別の記事(というか別に書いているブログですが)に良いロードバイクの条件について書いてみました。
<関連記事>良いロードバイクの条件を簡単に説明する話
何かしらの参考にはなると思います。
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