なぜ高額なロードバイクに乗り換えても速度が上がらないのかという話

2018/03/02

ためになる話 自転車の知識

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タイトル通りですが、今回はなぜ高額なロードバイクに乗り換えても速度が上がらないのかという話をしてみましょす。

なぜ高額なロードバイクに乗り換えても速度が上がらないのか

よく言われることではありますが『高額なロードバイクに乗り換えても速度は上がらない』というのはほとんどの場合で真実です。ではどうしてこういう現象が起きるのかという話ですが、それは自転車が「体力を調整する乗り物」だからです。

例えばエントリーバイクAで30km/hくらいの速度で巡行する山田君が数十万円クラスのバイクBに乗り換えたとしましょう。この場合でAでの走行負荷を100%と仮定すると、Bでの走行負荷はおそらく70%~80%くらいになるでしょうね。

ではこの差額の20%~30%がどこに上乗せされるのかということになりますが、この余力は大抵の場合で「走行距離」に乗っかります。

伸びるのはあくまでも快適に走れる距離であり(※時間といってもいいですが)、速度が向上するわけではないということですね。

結局のところ『バイクを運動させるパワーは人間が出力するしかない』わけです。

バイクの走行負荷が減ったところで人間が出力できるパワーとは特に関係ありません。腕立て伏せをするときにジャージを着てやってもスーツを着てやっても出来る回数はほとんど変わらないでしょう?

もちろん10kgを超えるようなクロモリロードバイクからアンダー7kgの軽量カーボンに変更すれば速度として+10%くらいの恩恵は出たりしますが、レース向けのエントリーバイクとして販売されているものであれば速度的なメリットはほとんど無いのが現実です。最近はエントリーでも十分軽くて硬いですからね。

クリス・フルームはエントリーバイクに乗っても絶対に速いですし、距離の短いレースであればハイエンドフレームとほとんど同じパフォーマンスが出せると思いますよ(疲労はとても増えると思いますが)。

これらのことについて逆を言えば、「エントリークラスのロードバイクであっても自分のパフォーマンスをきちんと確認できる」ということでもあります。

もしエントリーバイクで30km/h巡行が1時間可能であるなら、ハイエンドバイクに乗り換えれば2時間くらいまで巡行を維持できる時間が延びるであろうという算段を立てることは出来るわけです。

このように考えればロードバイクはエントリークラスであっても機能を満たすことが出来ると分かると思います。『エントリークラスのロードバイクは役に立たない』なんてことはありませんので、役割をきちんと理解した上で大事にしてもらいたいと思う今日この頃です。



高額なロードバイクのメリット

ついでに高額なロードバイクのメリットを書いてみますと、これは「加速度を上げやすい」ということです。高額なロードバイクはより軽くてより硬いのでキビキビと動かせます。

グランツールレースを見れば分かると思いますがレースというものはあまり差が付きません。トッププロは200km走っても数秒差だったりすることがあります。

こうなると勝つためにはどこで「違い」を付ければいいのかという話になりますが、これについて最も重要になるのが加速度です。

速度と加速度は似ていますが大きく異なります。速度は『ギア比』という目に見える数字で置き換えることができますが加速度はそうはいきません。

加速度はバイクとライダーで作り上げるパフォーマンスです。実際に加速度を測ることは不可能ではありませんがのようなことをしてもあまり意味はありません。大切なのは「なぜその加速度が出せるのか」という要因です。

もし最後のスプリントで普段の巡航速度+20km/hの速度が必要になったとしましょう。

この+20km/hをいかに早く達成するのかというのが自転車ロードレースの肝です。ゆっくり速度を上げても絶対に勝てません。そんなことをやっていたら最後に置いてけぼりを喰らうどころかクラッシュの要因になったりもします。

もっと言えば「反射神経」と言ってもいいかもしれません。コンポーネントの性能にも関わってくる部分ですが、キビキビかつスパスパと動いてくれないと実際のレースでは困るわけです。


この加速度の扱いはホビーユーザーとしてはとても難しいところで、実際のところレースに出ないのであれば不要です。速度なんてゆっくり上げて行った方が疲れませんからね、ロングライドメインであればむしろ逆効果の方が大きいでしょう。

とはいえ、加速度を上げやすいということがロードバイクという自転車競技の"本命"であることもまた確かなことで。

アンダー7kgのカーボンは10kgを余裕で超えるようなクロモリでは決して味わえない爽快感があります。

ぐいっと脚を踏み込んだ直後にバイクが伸びる感覚…まぁこれが加速度が上げやすいということなのですが、この感覚こそが競技用ロードバイクの神髄というものです。この感覚を「人馬一体」と言ったりしますね。

最高のロードバイクというものを端的に言えば『加速度のフィーリングが自分に合っているロードバイク』ということでいいんじゃないかと思います。

硬ければ硬い程エネルギーのロスが減るので加速度は上がりますが、自分の許容範囲以上に硬いとペダリングがスムーズに行きません。このフィーリングは人それぞれなので、所謂『インプレは当てにならない現象』が起きてしまうわけですね。

車だってそうですよね。昨今では『時速100km/hに到達するまでに何秒かかるのか』ということを公開していないスーパーカーの方が少ないくらいです。

軽自動車でもアクセルを踏み込めば時速100km/hくらい普通に出てくれますが、だからといって軽自動車がスーパーカーの変わりにはならないことは誰にでも分かるところでしょう。

それだけ加速度というものは競技では必要な要素となるわけです。

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