前回のジオメトリから続く内容です。具体的なバイクの基準について書いてます。
<レースバイクを選ぶ基準>
レースは競技であり、競技は結果を残すために行われるものです。そのためレースバイクを選ぶ場合はどうしてもある程度のグレードが必要となってしまいます。
ロードバイクと切っても切り離せないのが様々なコンポーネントですが、レースバイクの場合はここを蔑ろにするわけにはいきません。レースでは変速における低負荷やブレーキの安全性といったものが非常に重要になってきます。
・コンポーネントのグレードとは何か
良く言われることではありますが、もしレースバイクを選ぶのであれば105グレードが欲しいところです。ただ、勘違いしてはいけないのが『高額なコンポを選んでも速度が上がるということはない』ということです。軽量化はされているので速度を維持することは若干ながら容易にはなりますが、最高速度が変化するようなことはありません。
ロードバイクの定説のようなものとして言われる『最低105』は正解でもあり誤解でもあります。105を選択する理由としては「そこそこに軽い重量」で「十分に変速タッチが良く」て「11速が使え」て「値段としても無理が無い」からです。これらを理解していないとどんなグレードのコンポを選んでも意味が半減してしまいます。
コンポーネントのグレードというものは効率性です。
自動車で言えば「燃費」のようなイメージでしょうか。たまに排気量と誤解されている方がいますがそれは全くの誤解です。soraグレードが軽自動車で105が普通車、デュラエースがスポーツカーなんてことはありません。
自転車レースは如何に自分の筋肉や体力を効率よくマネジメントできるかということが重要となります。そうなってくると105グレードがホビーライダーにとっては最もバランスが良いと言う話です。
・・とはいえ資金に余裕があるならデュラエースをいきなり選ぶというもの間違いではありません。単純に効率性は高い程良いですからね。耐久性という面でもデュラエースが最高です。そうそう壊れることはありませんので一度買えば長く使えます。
個人的にはアルテグラは必要ないと考えます。アルテグラグレードまで行くのであればデュラエースを選んだほうが正解でしょう。同様の理由でティアグラも不要だと考えます。ティアグラまでいくのであれば105を選ぶ方が正解です。
・完成車の価格帯について
では金額としてどの辺りを選ぶかということになりますが、レースバイクの理想としては20万円~30万円グレードの完成車が欲しいところです。ブランドによって金額の差があるので何とも言えない面もありますが(※ジャイアントであれば20万円以下でいけます)、この価格帯であればほとんどのメーカーが105を搭載したレースモデルを揃えています。具体的なブランドとしては多数の選択肢があるわけですが、個人的にはレースバイクとしてはスペシャライズドのターマックシリーズが良いのではないかと思っています。
https://www.specialized.com/ja/ja/bikes/road/tarmac-sport/106447
ターマックの良いところは分かりやすいところですね。
上位のフラグシップモデルともほとんどジオメトリが変わらず(そのかわりカーボンの素材が違ったりします)、下位グレードであってもデザインとして洗練されています(他メーカーは下位グレードのデザインを あえて悪くしてるようなところも多い・・)。トータルパッケージが可能な数少ないメーカーでもあるので価格もそれほど高額ではありません。
ターマックのフレームについてさらに触れておくと、下位モデルのフレームは以前フラグシップモデルで採用されていた金型が使用されています。ジオメトリとして型落ちとはいえ、少し前のプロレーサーが使用していたかたちのフレームを使うことが出来るというのは魅力的でしょう。
もちろん他のメーカーでも一切かまいません、あくまでも個人的な好みとしての話です。ジオメトリに限定すれば大部分にの日本人にとってはアンカーが最適だったりしますからね。
・良いフレームか悪いフレームか
良いフレームとは何か?という問いには正解があります、それは「エネルギーロスの無いフレーム」です。クランクを回すエネルギーが全て推進力に変換されるのであれば何も言うことはありません。・・まぁ現実としてはそんなことはあり得ないわけですが、各メーカーは0.1%でもこのロスを減らすために多額の予算を投じて研究を続けています。
その研究において最も重要な単語のひとつが「フレーム剛性」というものです。
レースバイクの剛性は高い方が望ましいです。物体は固い方がエネルギーが伝わりやすいですからね、踏み込んだペダルの力をなるべくロスすることなく推進力に変えるには剛性は高い方が適切となります。そのため高額なハイエンドフレームは全て超高剛性で作られています。
とはいえ、硬いフレームはエネルギーのロスが少ない分身体に対する負担が大きいのも事実です。フレームの硬さは好みによる部分が大きいのでいかなる場合でも硬ければ良いとは限りません。どんなに評判の良いフレームでもユーザーによっては悪いフレームだったりします。
都合が良いことにカーボンフレームは3Kや12Kといった数字である程度の硬さが明記されています。この辺りは実際に乗って経験をしてみないと分からない部分ですが、もしカーボンフレームのレースバイクを選ぶ場合はフレームの硬さもチェックしておきましょう。
<エンデュランスバイクを選ぶ基準>
この場合は基本的には趣味となりますので、極端なことを言えば何でも構いません(※例外としてブルベに挑戦する予定がある場合はある程度のグレードが欲しいですが)。見た目が気に入ってバイクに愛着が持てることが何よりも大事です。
趣味で走るロングライドの場合はレースのように頻繁にギアチェンジすることもないためギア数も特別に必要ではありません。・・とはいえクラリス(8S)では流石に心もとないので、コンポは最低でもSORAグレード以上というのが妥当でしょうか。
しかしながら、エンデュランスバイクの場合は重量を無視してしまうと厳しいという現実があります。レースの場合であれば多少重量があった方が都合が良い場合もありますがロングライドではそうはいきません。ロングライドの場合は軽さがそのまま「性能」に繋がっていきます(※ホビーライダーにとっては特に!)。
・エンデュランスバイクは重量で決まる
極端なことを言えば「エンデュランスバイクの性能=重量」です。これは圧倒的に揺るぎの無い真理ですね。重いことが悪だとは言いませんが、軽いことは絶対の正義と言えます。・・では具体的な重量ということになりますが、これはペダル込みの状態で最低でも10kg以下、可能なら9kg以下が望ましいところです。この程度に軽量であれば十分にロードバイクの楽しさを感じることができますし、価格帯としても さほど無理の無い範囲に収まっていることが多いです。
フレームの種類は何でも構わないでしょう。理想としてはカーボンが良いところかもしれませんが、これくらいの重量でレースのように高速走行をしないのであれば素材としての差を感じることはほぼありません。
・エンデュランスバイクのコンポーネントについて
特別にグレードを問わないエンデュランスバイクですが、低グレードの場合の難点(?)はグレードアップが難しいところにあります。レースバイクであればコンポを上位に交換することで操作性を上げるといったグレードアップが可能ですが、シビアなバイクコントロールが要求されることのないエンデュランスバイクではこのようなことしてもあまり効果的ではありません。
高価なホイールに交換すれば400gや500gといった軽量化を行うことはできますが、上位の完成車に乗り換えた方が費用効果としては高い場合が多いでしょう。この辺りが少々悩ましいですね。
・"楽に乗ること"はかなり難しい
この「楽に乗れる」という言葉は往々にして誤解を招く表現です。サドルにまたがってハンドルを握った瞬間に楽であっても意味がありません、ロードバイクにおいては長時間ストレスフリーで乗れないと『楽に乗れる』とは言えないのです。これはきちんとポジションが出せている(=ロードバイクに乗れる姿勢が出来ている)ということが前提としての話なので、始めたばかりのホビーライダーにとっては判断することは極めて難しい部分です。
エンデュランスバイクは「アップライトで楽なポジションが~・・」と良く言われます。これは全くその通りなのですが、ちょっと間違えると変な部分に負荷がかかって筋肉痛が発生したり肩こりが酷くなってしまうことがあります。人間の身体は丈夫に出来ていますがそれ以上に繊細です。
レースバイクであってもエンデュランスバイクであっても乗る人間のポジションが大きく変わることはありません。これらのバイクの違いはジオメトリと剛性のバランスで用途がちょっと分かれるだけです。
矛盾するようですが、とにかく楽に楽にという方向にいくと逆に疲れてしまうことが多いです。ハンドルを握った瞬間に『ちょっときついかなぁ・・』くらいのポジションが実は一番疲れなかったりします。
・エンデュランスバイクの選び方
とりあえず硬いフレームは避けましょう。ホビーライダーかつカーボンフレームであればT600(12K)くらいが個人的には適当だと思います。3Kまでいってしまうとちょっと硬すぎかなぁ・・と。今はタイヤの種類が豊富ですので足回りで改善できる部分も多かったりしますが、それでもやはりバイクの中心はフレームです。
やや変則的ですがクロモリロードバイクでエンデュランスを楽しむというアプローチも存在します。こうなるとさらにマニアの世界ですので色々と面倒な感じもしますが、「ほどほど」にロードバイクの楽しむのであればこれも立派に正解の一つです。クロモリフレーム+ベントカーボンフォークの組み合わせは低速ロングライドには最高です。
<ツーリング(ランドナー)バイクを選ぶ基準>
こちらはこれでもかと趣味性の強い異色のバイクであるのでグレードといったものを提示することは困難です。・・というかそもそもグレードといったものがありません、あるのはブランドスタイタスや見た目の差くらいのものです。
絶対性として「頑丈であること」というひとつの基準はありますが、基本的にはやはり好みでしかありません。そのようなわけで具体的な要素を提示することが難しいのですが、ツーリングバイクではオプションパーツの拡張性とフレームの素材を蔑ろにすることはできません。
・ツーリングバイクであればダボ穴は必須になる
オプションに関しては、早い話が「ダボ穴が付いているかどうか」ということですね。ダボ穴は付いていれば付いているだけ便利になります。ダボ穴が付いていればキャリアや泥除けを付けることができますので自転車に積載できるものを大幅に増やすことが出来ます。ダボ穴がついていなくでもキャリアを付けることはできますが、その場合は使用できるキャリアの選択肢が小さくなりますし、そういった特殊性の強いアクセサリーは高価でもあります。無駄な出費を抑えるのであれば最初からこの辺りを意識しておかなければいけません。
とはいえキャリアの必要性については中々自分でも分からなかったりしますけどね・・本当にある時突然どこかに行きたくなったりしますので・・。
また、ツーリングバイクの場合はホイールサイズも選択肢が増えてくるので留意しておく必要があります。
結論からいえば「26インチか700Cか」という二択になるわけですが、このあたりは趣味としか言えない部分だと思います。個人的にはやはり26インチの方がランドナーらしいとは思いますが、別に700Cであっても悪いことはないでしょう。
現実的には700Cの方がホイールの選択肢が多いため合理的に考えるのであれば700Cの方が適切です。26インチのリムホイールはほとんど絶滅状態ですからね・・・まぁお店でホイールを組んで貰えばいいだけでもありますが。
・フレーム/フォークはやはりクロモリが良い
フレーム/フォークの素材はやはりクロモリを推奨します。最近ではフレームが金属・フォークがカーボンというものも多いですが、ツーリングを想定するのであればカーボンフォークは出来るだけ避けた方がいいと思います。耐久性という面もあるのですが、クロモリフレームの場合はサイズが1cm単位で細かく選べる場合があるため、より自分にあったフレームサイズを選択できるということが大きいです。値段としてはアルミより高額になることが多いかもしれませんが、長い目で考えればこちらの方が良いでしょう。自分にフィットするクロモリフレームは一生の宝物になります。
マイナー傾向の強いツーリングバイクですが、個人的にはこれがもっとも使い勝手の良い自転車だと思う所はあります。レースバイクもエンデュランスバイクも共にスポーツバイクであるため、『その辺のコンビにまで~』といったことは抵抗がある場合がほとんどでしょう。スタイルとしてもやはりレーシングジャージでなければ違和感が強く、カジュアルな普段着では中々合わせ難いものがあります。
ロードバイクを始めてしまうと「最初の一台」は必ずといってよいほどセカンドバイク・サードバイクになります。 これを見越してクロモリツーリングバイクを選ぶということもひとつの正解です。
推奨モデルを提示することは困難ですが、どうしても良く分からないといった場合は個人的にはKONAをお勧めします。このモデルであればとりあえず失敗することは無いでしょう。
関連記事「旅に出るための自転車の決定版?、KONAのTONKのバランス感が秀逸」
クロモリは商品名にクロモリと付いていれば何でも良いということにはなりません。安価なものは精度が出ていないものも多いですし、使用されているチューブによって振動吸収性は大きく変わります。
・ツーリングバイクのコンポーネント
ツーリングバイクの場合はコンポのグレード・・といいますか、ギアの枚数が重要になることも少なくありません。ロードバイクの場合は基本的にはフロントが2枚なので、ギアの選択肢を増やそうとするとリア側で対応するしかありません。その場合は当然ながらスプロケットを大型化することになりますが、ディレーラーの規格によってはこの大型化が出来ないことがあります。
ディレーラーにはSSとGSの二種類の規格があり、SSの場合は大型のスプロケットは使えないことがあります。ツーリングバイクを選ぶ場合はリアディレーラーがGSであったほうが都合がよいでしょう。もし荷物を積むような場合を想定しているのであれば事前の確認は必須となります。
コンポのグレードによっては大型ギアに対応してあるものもありますので、ディレーラーを選ぶときはこれも含めて確認しておきましょう。新型シマノSORA「R3000」は34Tまでに対応ギアが広がったようです。
『よし、なら11Sだ!』と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、本気でツーリングをするのであればその選択は良し悪しです。何故かと言えば、11Sはチェーンが細く出来ているので切れやすいというデメリットがあるからです。
一般的なサイクリングであればそうそう切れることは無いのですが、ツーリングは場合によっては20kg以上の荷物をバイクに積むことになります。こうなるとチェーンにかかる負荷が大きく変わってくることは言うまでもありません。
チェーンは滅多なことでは切れませんが、切れるときにはあっさり切れます。運の要素が強いので気にしていても仕方が無い部分でありますが、少しでもチェーン切れを回避しようとすると9S以下のコンポが良かったりすることもあります。
関連記事 「ホビーライダーのためのロードバイクの選び方(前編)」
関連記事 「ホビーライダーのためのロードバイクの選び方(参考編)」
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